60年前の僕
 
 メール、拝見しました。

 そうか、明日はもうクリスマス・イブなんですね。

 なにやらサバイバルのためのドタバタ続きで、日にちのことなどすっかり忘れていました。

 それにしても進さん、なんとも洒落た日に空に昇っていったものです。

 享年は、確か40でしたね。

       *

 今からちょうど60年前のあのクリスマス・イブの夜。

 山鹿の家の布団部屋で眠っていたら、襖越しに隣りの部屋から、なんだか甲高い智恵子叔母ちゃんや八重子叔母ちゃんたちの賑やかな笑い声のようなものが聞こえてきました。

 そっと襖を開けて覗いてみたら、みんなが体を丸めてくつくつ笑っているようです。

「ああ、お父さんは大丈夫なんだな」

 ホッとしてそう思いながら、またすぐに眠ってしまいました。

      *

 次の朝に目覚めてみると、それがさつみさんや叔母ちゃんたちの低く抑えた悲鳴や泣き声だったのだと知りました。

 火葬場に行くとき、みんな僕のことを忘れてしまい、ひとり家に取り残されました。

 僕は、まだ元気だった進さんと一緒に込み合う温泉銭湯に行って、進さんのつもりで手を握っていたところ、それが知らないオジさんだったと知ってビックリ仰天、激しく手を振り払いながら泣き出したときのことを思い出していました。

 ひとりぼっちが怖くなって、火がついたように泣き喚いていると、誰かが迎えにきてくれました。

 きっと、みんな茫然としていたのだと思います。

 いつも一緒で、優しかった姉ちゃんもね。

       *

 葬式のあと、しばらく休んでいた幼稚園に通い始めました。

 ある日家に戻ってくると土間に平台が置かれ、家の中はすっかり駄菓子屋さんに変わっていました。

 右側の棚では、貸本屋さんもやるのだといいます。

 進さんは早くに亡くなったので、勤務先の県地方事務所からもらえるお金はほとんどなかったのだそうです。

      *
 
 びっくりする僕に、さつみさんがおいしい「雀の卵」(ピーナッツ入り駄菓子)をいっぱい食べさせてくれました。

 さつみさんは、いつも笑顔だったけれど、ふと見せる横顔はどこか寂しそうでした。

 まだ、30代の半ばだったはずです。

 それが、僕の6歳のときのクリスマス・イブの哀しい思い出です。

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