チェンマイで悠々として急げ!

カレン族の村から迷い出たクンター(爺様)のよれよれ、とぼとぼ「再生記」

カテゴリ: 安くてうまい飯

カオマンガイ


 “究極のカオソーイ屋”が、ついに復活した。

 車線をはみ出して来た対向車を避けようとしたクルマが暴走して、店先の鉄柵をコンクリートの根元ごと破壊してから幾星霜(?)

 爺様はカオソーイを食べられずに、半死半生の目に遭ったのだが・・・。

 田舎町の総力を結集した再建工事は日々順調に進み。

セメント袋

柱型枠

ブロック積み
セメント練り

ブロック内部


 正しく言えば、この「“究極のカオソーイ”も何気なく出しちゃう大衆食堂」は、なんと図々しくも雄々しくも能天気にも、柱のセメント打ちが終わった事故の翌日から、堂々と営業を開始したのであった。

 ハハハ。

 つまり爺様は、読者の皆様が胸を痛めていた休業のその翌日から、まあ、なんとも抜け抜けと、舌とろかす “究極”のカオソーイやイエンタフォーやカオマンガイを、毎日がつがつと優雅に食べ続けていたのであります。

 ムフフフ。

 ざまあご覧におあそばせませ!(「お気の毒に」という意味の大和言葉でありんす)。

     *

 さてさて、“究極のカオソーイ屋”は、再開後もきわめて元気であります。

 いや、なんだかますますパワーアップしたみたいで、心なしか生麺と揚げ麺とトッピング野菜の盛りがググンと増したような異様な迫力で迫って来るんですなあ、これが。

カオソーイ1

カオソーイ2

カオソーイ3


 爺様、「もう、いつ死んでもいい」と涙で呟く幸せなる日々。

 しかし、人間、いくらうまいからといって、いつもいつもカオソーイばかりでは、死んでも死に切れません。

 ん?

 だから爺様、このごろは急に変節して“究極のカオマンガイちゃん”にお熱をあげているんですう。

 うふ〜ん♪

      *

 カオマンガイは、まあ、ひとことで言えば「蒸し鶏の飯上載せ」ですな。

 それに、鶏ガラスープと茶色の唐辛子タレが必ずセットでついてくる。

ソースかけない


 3品がテーブルに届いたら、先ずはフォークを皿の左脇に背を上にして立てかけ、右手にスプーンを持って熱々鶏ガラスープを優雅に啜ります。

 タイ人は上品だから、器はテーブルの上に置いたまま、背を伸ばしてスープをすくったスプーンの先を口先にもって来るようにして、決して音を立てることはありません。

 ここで味噌汁を食べるときのように器をつかみ、ずるずると音を立ててしまえば、チェンマイにおけるあなたの人望は、瞬時にガラガラと音を立てて崩れ去ることでしょう。

 ああ、ナマンダブ、ナマンダブ。

     *

 さて、スープをひとくち、ふたくち味わったらば、いよいよ、ご飯の上に鎮座するご本尊に取りかかります。

 普通のタイ人は、食べるだけの分量の鶏に小皿から茶色のタレを少しずつすくってまぶしながら食べておりますな。

 しかし、これでは蒸したブロイラーや細長いタイ米といったちょっと匂いのある大衆食材を十二分には活かしきれない。

 そこで普通のタイ人でも、普通の日本人でもない爺さまは、そのタレを鶏肉の上全面に一気呵成にぶちまけてしまう。

カオマンガイ


 なぜか?

 それはこの店が、そのタレの中に擂り下ろした生姜を混ぜ込んでおり、実に良い薫りがするからであります。

 おろし生姜はいわゆる「匂い消し」の役割も果たすのであるからして、この豪快な手法がブロイラーとタイ米の負の匂いを一気に消し去り、むしろ混血による新たな正の薫りを高めるという驚くべきミックス効果を発揮するのであるのである。

     *

 かくして、またしてもチェンマイ市街地にある有名店のカオマンガイなんぞ、鼻の先でせせら笑いたくなるほどに舌をとろかす“究極のカオマンガイ”が、この地上に平和をもたらすべくと神々しく降臨するのであった。

 むふ〜ん。

 爺様、ホントにもういつ死んでもいい。

 さよなら、さよなら、さよなら。

 でも、明日の昼は何を食べようかな?

 悩んじゃうよなあ。

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★クンター、今日のお薦め。

タレー
 
 おそらく、ロングステイヤーの中でも、この不思議な麺を食べたことのある人は、さほど多くないのではあるまいか。

 実は、別れた嫁の大好物だったのだが、最初に敵がこの麺を食べているのを見たときは、正直言ってギョッとした。

 なんと、スープがピンク色なのである。

 おそらく、豚の血でも混じっているのではあるまいか。

 このゲテモノ喰いめ!

     *

 あとになって、確かに豚の血が混じっている麺もあるのだということを知った。

 だが、それは「ナムトック」と言って、これとはまったく別の麺料理なのだ。

 そして、怖々試してみると、実にうまいんだな、これが!

 ナムトックを一度食べると、いわゆる普通のクイテアオ(タイラーメン)では物足りなくなるほど味が濃厚なのである。
 
 しかも、生臭さなどはまったく感じない。

 源を同じくする豚骨スープと血液が見事に絡まり合って、実に見事なハーモニーを奏でるのである。

 うーん、アロイ・チンチン!(本当においしい)

     *

 さて、このピンク色のスープに包まれた怪しい「イエンタフォー」、これも怖々食べてみると、感動的にうまい。

 テーブルに供されるときには、たいてい写真のようなキツネ色のカリカリ揚げが載せてある。

完成


 それを取り除いてみると、具にはイカ、エビ、ルクチンプラー(タイ式さつま揚げ)などの海産物と、定番の空芯菜がたっぷりと入っている。

 その下の麺は、米でできた半透明の平麺である。

平麺


 さて、先ずは疑惑のスープを啜ってみよう。

 ふーむ。

 ちょっと酸味のある、唐辛子の効いた味付けだ。

 だが、全体としてまろやかな調和がとれており、すっと喉を通ってゆく。

 こうなると、この怪しいピンク色のスープの正体が知りたくなるのが人情というものだ。

 店の親爺に声をかけると、さらに怪しい練り物のようなソースを見せてくれた。

ソース


 一般的には、瓶詰めされた液体状のソースを振りかける店がほとんどだ。

 ところが、この店ではある市場で仕入れた練り状の特性ソースを使っているのだという。

 ふーむ。
 
 だがしかし、このピンク色のソースの正体とは一体なんなんだ!?

      *

 ここで知ったかぶりをすると、その正体は「腐乳」なのである。

 さらに臆面もなく博識振りを披露すると、腐乳とは豆腐と麩(ふ)を一緒に塩水に浸けて、発酵させた中華食材の一種なのだ。

 中華料理では、旨味調味料としてコクを出すために煮物や炒め物に入れたり、お粥のトッピングとしてもよく使うらしい。

 発酵食品なので「豆腐のチーズ」と呼ばれることもあり、臭いもなかなかのものだそうだ。

 これだけだと、ひるむほどの臭いと塩味だというが、惣菜やお粥と一緒に食すと驚くほど味に深みが出る。

      *
 
 色は白の場合が多いのだが、紅麹(べにふ)を使って発酵させると紅い色の「紅腐乳」に変わる。
 イエンタフォー・ソースはこの紅腐乳を使うから、スープが紅色、というよりもスープと混じり合ってピンク色になるという仕掛けだ。

 その素性は、中国でタオフー・ジーと呼ばれる腐乳豆腐と紅麹を塩水中で発酵させたものと、トマトソースまたはチリソース&唐辛子を混ぜた混合調味料といえる。

「イエンタフォー」という呼び名は、どうやら中国の「釀豆腐」にルーツを発するらしい。

 「醸」とは、発酵を意味する。

 つまり、もともとは中国からタイに伝来した料理だと考えられるわけだ。

 しかし、タイ語で豆腐は「タオフー」というのだけれど、今では「(イエン)タフォー」に変わっている。

      *

 どうしてだ、え?

 どうしてなんだよお!

 貴様あ〜、そんなことも知らねえのか?

 ドン!(取り調べ室の机を叩く音です)

 その変化の過程については、にわか勉強の爺様を拷問にかけて、これ以上厳しく尋問するのは酷というものであろう。

 お代官さま、どうか勘弁してくだせえまし。

 ほらほら、つべこべ御託を並べていると、せっかくの具はふやける、麺はすっかり伸びちまうぜい。

th_全体俯瞰


 へいへい、そいじゃあ、先ずはエビ様から。

 あふあふ、ア、これは天ぷらだなあ。

 イカは、ぷりぷり、むっちりと噛み応えがあって。

 むふう、ルクチンプラー、甘みがあってルクチンムー(豚肉丸団子)なんぞ、へへ〜っと恐れ入りそうだ。

 半透明の平麺は清楚なたたずまいで、喉越しツルツル。

 空芯菜は、カリカリしてさっぱり。

 ふう、ぼかあ、幸せだなあ。

スープ


 麺と具をおおかた平らげると、丼の底にはピンク色のスープが堂々と胸をそらして傲然と出現する。

「どうだ、参ったか、この俺様がイエンタフォーの味の秘密を握っているのだぞお!」

 その埃、もとい誇り高さには、こちらも客という立場を忘れて、思わず平伏したくなるほどの存在感なのである。

 これが慣れ親しんだカオソーイならば、すぐさま飯を放り込み、カレーライスにして反撃を敢行したいところだ。

 だがしかし、敵は中国百年の麺の歴史にルーツを持つらしい強者である。

 それに、麺たくさん、具たくさんで、育ちのいい爺様はすでに腹一杯なのだ。

 ゲップ!

 ここは敵に余裕を見せながら、ゆるゆる、たらたらとスープの最後の一滴まで傲然と飲み干したい。

 うーむ、そこのイエン太とやら、ご苦労であったのお!

 さて、勘定は如何ほどじゃな?

 ゲゲッ!

 な、なんと、たったの30バーツ!?

 ヒ、ヒエ〜ッ!

     *

 ハッキリ言えば、今回写真で紹介したような正しく堂々としたニッポンの、もといタイランドの本格イエンタフォーには、滅多に出会えるものではない。

 そこいらのクイティアオ屋に、この重厚かつ繊細な味わいを求めるのは酷というべきだ。

 だから、あなたは食べるのを諦めなさい。

 そんな可哀想なあなたの代わりに、この爺様がたっぷり食べてあげますからねえ。

 それでもたっての願いだというのなら、店の場所を教えてあげましょう。

 いいですよ、いいですよ。

 じゃあ、あとで銀行の口座番号と謝礼の相場を教えますから、たっぷりとね。

 ふふん、ふん♪

 いえいえ、もちろん、気は心、気は心。

 オホオホオホ・・・。

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★クンター、今日のお薦めです。

冒頭

 一昨日の夕暮れ時。

 晩飯のおかずを買いに出ると、総菜屋のあたりの雰囲気がどうもいつもとは違っている。

 おかしいなあ?

 そう思いつつ近寄ってゆくと、すぐ向こう側の食堂の鉄柵とそれを支えるコンクリートの柱や壁が、根こそぎなぎ倒され、ぶち壊れているではないか。

事故直後


 あちゃ〜ッ!

 一体、何が起きたんだあ?

     *

 実はこの小さな食堂、11月21日に書いた「神様、仏様、カオソーイ様」という記事で紹介した“究極のカオソーイ”を出す店なのである。

 決して、専門店というわけではない。

 だが、12月5日付けの「カオソーイで幸せになる方法」の中でも触れたように、チェンマイの某有名店をはるかに凌ぐ気品と気迫に満ちたカオソーイを作って、貪欲な爺様の胃袋を日々、歓喜の渦で満たしてくれているのであった。

事故1時間前


 そ、その“究極のカ、カオソーイ屋”が、い、いま、爺様の目の前で、む、無惨な姿をさらしている、あわわ・・・。

 これをショックと言わずして、何をショックと呼べばいいのだろうか。

 ガーン!

 これで、あの歓喜のカオソーイは二度と食べられないのだろうか?

     *

 そこへ、すっかり顔なじみになった女将さんがひょいと顔を出した。

 おお、無事だったのか!?

 この女将さんや親爺さんの安否をさておいて、先ずはカオソーイの安否を気にかけた自分を大いに恥じながら、爺様は訊いた。

「一体、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、クルマが店にいきなり突っ込んで来たんだよ!」

「親爺さんは無事かい?」

「ああ、大丈夫だったよ」

「酔っ払い運転?」

「いいや、女の運転手が事故に巻き込まれそうになって、ハンドルを切り損ねたらしいんだ」

検分痕2

検分痕1


 彼女の話をまとめると、こうだ。

 今日の午後2時頃、店寄りの左車線を走って来たクルマが、凄い勢いで突っ込んで来て、頑丈なはずの鉄柵をドガンドガン、ガギガキガキとなぎ倒した。

 クルマはそのまま止まったからいいようなものの、もしももっと勢いがついていたら、目と鼻の先にある調理台の向こうに立って作業していた二人も、決して無事では済まなかっただろう。

 女性の運転手がハンドルを切り損なった原因は、対向車線を走って来たクルマが、いきなり車線を超えて彼女の目の前に迫って来たからなのだ、という。

 おお、怖わ・・・。

     *

 午後2時といえば、爺様がこの店で昼食のカオソーイを食べていたちょうど1時間あとだ。

 そして、爺様が座っていたテーブルは、この調理台の斜め前くらいに置かれていた。

厨房の前


奥にテーブル


 もしも、その時間にクルマが突っ込んで来ていたとしたら、直接的な被害は受けなくとも、心臓マヒかなんかでとっくに昇天していたかもしれない。

 おお、怖わ・・・。

     *

「今日は、無事にカオソーイが食べられるのだろうか?」

 翌朝になって、早くも昼飯の心配をしながら現場を覗きに行くと。

処理工事


 すでに業者がやって来ており、破壊された鉄柵やコンクリートの撤収作業を行っていた。

 調理台には覆いがされて、とても調理などできそうには見えない。

 ああ、今日は休みかあ。

 がっくりだなあ。

 そんなら、お昼はどこで何を食べようか。

     *

 そんな能天気なことを考えていたら、奥から親爺が顔を出した。

「今日は休みなの?」

「ああ、これじゃあ、とても商売なんかできないよ」

 親爺はあたりを指差して、大きな溜め息をついた。

「工事が始まったんだね」

「ああ、この残骸を全部どけて、新しく作り直すのに4日はかかるんだそうだ」

「え? 4日も!」 

 目の前が暗くなる。

     *

 ああ、この先96時間、私は一体どうやって生きて行けばいいのだろう。

「ねえねえ、親爺さん。カオソーイは手間がかかるから無理にしても、せめてカオマンガイ(蒸し鶏のご飯載せ)くらいは、こっそりと俺だけのために作ってくれないかなあ」

 いかに本音とはいえ、この傷心の親爺の前ではとてもそんなことは言えない。

 言えば、瞬時に首を絞めて殺されるだろう。

「貰い事故の上に4日も休業させられたんじゃあ、それこそ堪んないよね。頭が痛いだろうけど、せいぜい骨休みと考えてさ。また、カオソーイ食えるのを楽しみにしてるから」

     *

 滅茶苦茶なタイ語で意味が通じたかどうかは知らないが、ともかく、「そんな励ましを言ったのだ」という心で、現場をあとにした。

 休業分の補償や再建工事費は、どうやら保険でまかなえるらしい。

 それだけが、せめてもの救いだろう。

 96時間の時空を経て、たくましく甦れ、わが究極のカオソーイよ!

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★クンター、今日のお薦めです。

カオソイ

 ご存知カオソイは、カレー&ココナッツミルクをベースに、黄色い生麺と揚げ麺をミックスして醸し出される複雑かつ玄妙なる味わいの「究極麺」でござ候。

 と、冒頭からいきなり力が入ってしまうほどに大好きなんですなあ、この爺様は。

 いわゆる「チェンマイ名物」なんて呼ばれて、有名店などもあれこれ紹介されているのだけれど。

 これまでに、一度も「これだ!」と納得した覚えはない。
   
     *

 ところがおよそ3年ほど前、かつて暮らしていたオムコイの町に、突如としてがんがんテーブルを叩いて喜びたいほどに美味いカオソイ屋が出現した。

 その絶妙なる味のコンビネーションは、軽薄ライター(若き日のワタクシもそうだった)が適当に書きなぐって紹介する「チェンマイの有名店」なんぞ、吹き飛ばすほどの迫力であったのだったのだった(爺様、興奮すると血圧が・・・)。

 ところが、この「オムコイの無名店」は、1年も経たぬうちに、これまた突如として閉店した。

 おそらく、味付けと骨付き鶏肉に金をかけ過ぎて、採算がとれなくなったのだろう。

 この点、爺様が2年ほどで潰してしまったクイティアオ(タイラーメン)屋の末路とまったく酷似しており、落涙を禁じ得ない。

 ああ、それから幾星霜、このカオソイ好きの爺様とテーブルを叩いて喜びたくなるような美味いカオソイとの衝撃的な邂逅は、ついに果たされる事がなかったのである。
     
     *

 ところが、どうだ。

 理不尽な日常に疲れ果て、山奥の村から逃れ出て、よろよろ、ふらふらと某所に隠れ住み始めた途端。

 それも、わずか3日目にして、しかも拍子抜けするほど、いとも簡単に。

 この衝撃的な邂逅が実現したのには、極度な不眠に悩まされ、眉をしかめながら死に損なっている爺様も、思わず破顔一笑せずにはいられなかった。

 まさか興奮してテーブルをがんがん叩きはしなかったけれど、大げさにも「ああ、生きていてよかった」と心中で叫ばずにはいられなかったのだ。

 人間、バンザイ!

     *

 ふう、ここでようやく本題である。

 要するに、近所の食堂なのである。

 専門店などではなく、麺類もご飯類もすべて扱う大衆メシ屋なのである。

 この掃き溜めのような場所に、とんでもなく美麗な鶴が潜んでいたのである。

 だから、食べ始める前にはなんの期待も抱いてはいなかった。

 小皿にたっぷりと盛られたパッカドン(高菜漬け)とホンデーン(紫ミニ玉ねぎ)の大雑把な刻みに、静かな気迫のようなものを感じただけだ。

     *
 
 スープをひとくち啜って、思わず唸った。

 タイ料理にありがちな不自然な甘みや、とってつけたような辛みが、まったくない。

 深いオレンジ色のスープの底に沈む生麺は、あくまでもまろやかで。

 その上にどさっと鎮座するキツネ色の揚げ麺は、カリカリと軽やかで。

 そこへ、ねっとりとした濃厚練り赤唐辛子をまぶし込み(これ、入れ過ぎると頭から火を噴きますぞ)。

 小皿に盛られた高菜漬けや刻み玉ねぎを、どさっと放り込む。

 最後にマナオ(タイレモン)をぎゅっと絞りかけ。

 添えられた箸とチョーン(アルミ蓮華)で、ぐちゃぐちゃとかき混ぜて。

 あとはモノも言わずに、ズルズル、ワシワシと無心に咀嚼を続ける元番頭さん、もとい、フリーダム爺様なのであった。

     *

 麺と具を八分がた平らげたところで、ふと気がついた。

 そうだ、京都へ行こう!

 じゃなかった、カレー飯にしよう!

 ご飯を5バーツ分注文して、残ったスープの中にばさっと放り込む。

 ぐちゃぐちゃとかき混ぜると、そこに現出したのは。

 日本のカレーライスに勝るとも劣らないはんなりとした味わいの、まさに爺様が求める究極の「タイラーンナー(北タイ)風カレーライス」なのであった。
カレー飯

 ああ、神様、仏様、カオソイ様!

    *

 ハァ、ハァ、ハァ・・・(息切れです)。

 すっかり興奮して書き忘れるところだったが、これがたったの30バーツなのである。

 飯を入れても、35バーツなのである。

 どうだ、どうだ、まいったか!

 かつて暮らしていたあの山奥の村のまずいまずいカオソイですら、40バーツもする物価高騰期なのである。

 それが、この「タイ第二の大都市」と呼ばれる市街地からさほど遠くはない近郊の町において、堂々たる、かつ正しい北タイ価格であるところの30バーツを堅持しているのである。

 無間地獄のごとき21世紀において、この涙ぐましい営業努力に脱帽せざるして、一体、何に脱帽せよというのだ?

 責任者よ、出て来い!

 そして、このカオソイにしっかりと土下座をしなさい!

     *
 
 ふう。

 今日も3時間しか眠れなかったせいか、興奮続きの爺様ではあったけれど。

 わが人生の新しき門出に巡り会った愛しきカオソイのことを紹介することができて、気分は朝陽のごとく爽やかである。

 ふん、ふふん、ふ〜ん♪

 今日の昼飯は、むろん、このカオソイに決まりだ。

     *

 やれやれ。

 この爺様、高血圧症患者にして、なおかつ極度の不眠症でありながら、食欲だけはいやんなっちゃうほど旺盛なんだからなあ。

 まったく、もう・・・。

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★クンター、本日のお薦めです。

ジョック

 朝6時半過ぎに米を研いで、飯を炊き。

 ついでに、「なんで、こんなことしなけりゃならんのだ」と怒りを噛み殺しつつ、昨夜バカ息子や友だちどもが食い散らかした食器まで一緒に洗い。

 次にナタで薪を割って、嫁が囲炉裏で料理用の焚火を熾すのを手伝い(彼女が二日酔いのときは自分で簡単なものを作る)。

 唐辛子やニンニクやミニ玉ねぎを、小臼でコンコンコンと搗き。

 あるいは、それらを熾き火であぶってナムプリック(唐辛子タレ)の下ごしらえをし。

 すでに1〜2杯焼酎をひっかけたらしい嫁に言われて、痛む腰を叩きながら庭に植えたレモンハーブやタイ生姜やウコンを掘り出し。

      *

 途中で近所のタダ酒呑み連中が乱入してくれば、そのうるささや料理の遅滞にぐっと我慢を重ね。

 水曜日になると、町の水曜市にひとりで買い出しに出かけ。

 戻ってくれば、「野菜が足りない」だの「魚が古い」などと文句を言われ。

 料理が長引いて、下手をすると朝9時になっても朝飯にありつけない・・・。

 そんな理不尽な日常に堪えて来た爺様にとって、今の「緊急避難生活」はまるで極楽のようなものである。

     *

 毎朝2時、3時に目が覚めて、それ以上眠れなくなるのはとても辛い事だが。

 ふらふらしながらも、朝6時半頃には散歩に出かけ、朝陽を迎える。

 1時間近い散歩が終わって腹が空けば、そのまま粥屋に立ち寄って一本指を立て、いつものジョック(タイ式煮込みおかゆ)を注文する。

 ゆがいた豚叩き肉と半熟卵と生姜のみじん切りと2種の香草をまぶして、料金は30バーツ(約100円)なり。

 あとは、タイ醤油、搗いた乾燥赤唐辛子、レモン酢などを好みに応じてかけ、チョーン(アルミ蓮華)でかきまわしながらふうふうと食す。

     *

 市販のインスタント・ジョックといえば、いわば離乳食のようなもので、4袋(40バーツ)煮ても、あんまり腹にはたまらない。

 しかし、ここのジョックは「日本のおかゆ直前」といった絶妙な米のとろけ具合で、炊いた飯にスープをぶっかけただけのようなスカスカのカオトォム(タイ式おかゆ)よりもずっと食べ応えがある。

 しかも、たっぷり盛りつけてくれるから、昼飯まで充分に保つのである。

      *

 なによりも嬉しいのは、毎朝通ってすっかり顔なじみになったオヤジの優しい笑顔である。

 店先に立てばニカッと前歯を見せて、注文せずとも手早く「いつものやつ」を出してくれるようになった。

 勘定の際、脇でコーヒーを売る女房ともども、今やオムコイの飯屋や諸店舗でも滅多に聞かれなくなった「コップン・クラップ(ありがとう)」を丁寧に言ってくれることも、朝にふさわしい爽やかな気分にさせてくれるのである。

 今日も、いただきます!

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