元旦のうちにやっておくべきことが、無事にすべて片づいた夕刻。
ふらりと散歩に出ると、小康状態だった神経痛がまたぶり返してきた。
例のセクシーなお尻の右のえくぼのあたりが、妙に「痛だる」い。
妙な形容だが、そんな風にしか書き様がない痛みであり、だるさであるのでR(なんて表記が、一時流行りましたなあ、嵐山さん)。
そして、そこから広がった太腿の裏側、ふくらはぎ、脛へのラインが、切ないほどに痛苦しい。
切ないなんて気持ち、ずっと忘れていたのだけれど。
このもどかしいような、身悶えしたいような、震えるような恋心、じゃなかった「痛だるさ」、ホントにもう身をよじりたいほどに堪え難いのだ。
*
ああ、どうしよう、どうしよう。
年末にかかったマッサージ師は、明日にならないと出て来ない。
だけど、このまま座して死を待つ(?)心境にはとてもなれない。
そこで、びっこをひきひき、ウオーキングの途中で見かける小さなさびれたようなマッサージ店に向かった。
*
スライドドアを開くと、婆さんが仰向けになって昼寝をしている。
あちゃ〜、こりゃ外れかなあ。
そのまま引き返そうとしたら、意外や意外、その昼寝婆さんが素早い身のこなしで起き上がると、「ほら、入って、入って」と私の腕を取った。
やむなく靴を脱いで床に立つと、そこには4つのふとんが無造作に敷き並べてある。
年末に行ったマッサージ屋のようにカーテンで仕切ってあるわけでもなく、静かな癒し系のBGMが流れているわけでもない。
お決まりの洗足もなく、「じゃあ、そこに寝て」と適当なふとんを指差された。
マッサージまで適当にやられては困るから、右足を指差して、ちと大げさに症状を説明する。
「ああ、そりゃ**だね」
とあっさり言われたが、意味は分からない。
でも、この婆さん何気にできる風も見えたから、メガネを外してふとんに横たわろうとすると、
「あ、その前にこれに着替えてちょうだい」
ぶかぶかのタイパンツを渡された。
でも、着替える場所なんてどこにもない。
「アタシしゃ構わんから、ここで着替えなよ」
あの、こっちが困るんですけど。
*
仰向けに寝た。
荒っぽく私の右足をさすった婆さんが、
「あちゃ、こりゃパンパンだわ。どれ、左を下にして横向きになって。ほれ、左足は伸ばして、曲げた右足を左足の上にこう乗せる、と」
その態勢ができると、いきなり左足のふくらはぎに激痛が走った。
見ると、婆さんがその上に乗って体重をかけているのだ。
しかも、なんで痛んでいないはずの左足?
*
「い、痛い、痛い!」
そう叫んだが、婆さんは一向に構わない。
思わず右手を伸ばして、婆さんの足をむこうに押しのけた。
「おお、おお、随分と痛がりだねえ」
婆さんの口調には揶揄するような響きがあったが、痛いものは痛いのだ。
婆さんは苦笑しながら私の右側に座り込み、右足を抱え込むようにして手によるマッサージを始めた。
これがまた、荒っぽい。
痛みの震源地であるお尻のえくぼのあたりに、容赦なく肘や指を食い込ませて、筋をほぐすようにグリッ、グリッとずらしてゆく。
その攻撃が、いつ核心部に達しまいかと気が気ではない。
金だけ払って、もう帰ろう。
そう思った瞬間、右足の指先に別の感触が伝わってきた。
ひ! なんだ、これ?
だって、婆さんは私の右足を左手で抱え込んで、右手で施術をほどこしているのだ。
とうことは、別の誰かが婆さんとはまったく違う繊細なタッチで、私の指先をほぐしていることになる。
ゾゾ〜ッ、これって流行りかなんかの「ピー(心霊)マッサージ?
*
ちらと目をやると、な〜んだ、さっき私に達者な英語で「あんた、日本人?」とたずねてきた旦那ではないか。
確か、私よりもずっと年上、間違いなく70歳は超えているだろう。
その爺さんが、なぜにこの年下のメイドインジャパン爺様のマッサージなんぞ?
ひとりっきりではつまんないから、暇つぶしに私の足で遊んでるのかなあ。
*
そんな影の薄い爺さんが、その旗幟を鮮明にしたのが、いきなりの「マッサージマシン攻撃」である。
足指の揉みほぐしが終わったと思ったら、
「ブイ〜ン!」
いきなりハンディ・マッサージマシンを稼働させて、ウイン、ウイーンと足裏のツボを攻め立て始めたのであります。
くすぐったいのもあって、思わず笑っちゃう私。
一方で婆様は、相変わらずの荒っぽさでぐいぐい、痛む箇所を伸(の)して行きます。
揉むというのではなく、文字通り伸す。
特に、それが脛や腿の表面に及ぶと悲鳴を上げたいくらいに痛む。
だけど婆さんは、「そんなに痛くないはずだよ、軽くしかやってないんだから」と首をひねりながらのたまう。
*
そこでふと、10数年前のことを思い出した。
ガン宣告からおよそ1年半。
過酷な闘病の果てに妻が逝ったあと、極度の不眠と鬱に翻弄されていた私は、今と同様に必死にサバイバルの道を探っていた。
そんな頃、「ガン患者家族の会」という集いに参加して、ご主人を亡くしたばかりの同年代の女性と知り合った。
彼女は経済的な自立をめざして、ある整体マッサージを学んだという。
私がさっそく、今の辛い体調を打ち明けると、彼女はすぐに施術を約束してくれた。
そして、彼女の自宅での施術が始まると私はすぐさま大きな悲鳴をあげた。
彼女は、約10センチくらいのマッサージ棒で、私の足の指先を軽く押しているだけなのだという。
だが、私にはそれがまるで拷問のような猛烈な痛みに感じられて、思わず悲鳴をあげてしまったのだ。
それほど私の体はボロボロで、神経がくたくたに疲弊しているのだと彼女は教えてくれた。
今、婆さんの施術を受けて大げさな悲鳴をあげている私は、おそらく、その10数年前の私と同じような体調のもとにあるのだろう。
*
激しい痛みの連続の中に、たまにまどろみたいような安楽のときが訪れる。
そんな奇妙な二人掛かりのマッサージが終わった。
二人の攻撃は、首や背中に及ぶことはついぞなく、右足を中心とした腰以下の押し、伸(の)し、突き、揉みに終始した。
婆さんが仰向けになった私の右足を指差して、「伸ばしたまま持ち上げてみろ」と言う。
指示通りにすると、右足がひょいと上がって痛みはまったく感じない。
あれえ、おかしいなあ。
起き上がると、右のふくらはぎの下の方だけに軽い痛みを感じた。
「一回ではすべての痛みは取れないよ。少なくとも3日は連続でやらなくちゃ。明日もきっと来るんだよ」
確かに、痛かった。
「もうやめてくれ!」と叫んで、爺さんや婆さんの手を払いのけようとしたこともあった。
だが、いまの私は、すなおにこの二人掛かりの奇妙なマッサージを明日も受けてみたい、という気持ちになっていた。
最後に値段を訊くと、「ああ、1時間で200バーツだよ」
婆さんが、思い出したように言う。
いわゆる、標準的な値段である。
高くも安くもない。
普通はお互い最初に値段を確認し合うものだが、この3P(3人のプロジェクトチーム)、値段よりも先に私の足の「痛み」に一気にフォーカスしてしまったようだ。
それよりも婆さん、爺さんの二人が、なんだか疲れたような、それでも満足したような年寄り特有の微妙な表情を浮かべていることに私は打たれた。
明日の結果症状と、その後の新たな二人がかり3Pプレイが楽しみになってきたぞお。
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