タレー
 
 おそらく、ロングステイヤーの中でも、この不思議な麺を食べたことのある人は、さほど多くないのではあるまいか。

 実は、別れた嫁の大好物だったのだが、最初に敵がこの麺を食べているのを見たときは、正直言ってギョッとした。

 なんと、スープがピンク色なのである。

 おそらく、豚の血でも混じっているのではあるまいか。

 このゲテモノ喰いめ!

     *

 あとになって、確かに豚の血が混じっている麺もあるのだということを知った。

 だが、それは「ナムトック」と言って、これとはまったく別の麺料理なのだ。

 そして、怖々試してみると、実にうまいんだな、これが!

 ナムトックを一度食べると、いわゆる普通のクイテアオ(タイラーメン)では物足りなくなるほど味が濃厚なのである。
 
 しかも、生臭さなどはまったく感じない。

 源を同じくする豚骨スープと血液が見事に絡まり合って、実に見事なハーモニーを奏でるのである。

 うーん、アロイ・チンチン!(本当においしい)

     *

 さて、このピンク色のスープに包まれた怪しい「イエンタフォー」、これも怖々食べてみると、感動的にうまい。

 テーブルに供されるときには、たいてい写真のようなキツネ色のカリカリ揚げが載せてある。

完成


 それを取り除いてみると、具にはイカ、エビ、ルクチンプラー(タイ式さつま揚げ)などの海産物と、定番の空芯菜がたっぷりと入っている。

 その下の麺は、米でできた半透明の平麺である。

平麺


 さて、先ずは疑惑のスープを啜ってみよう。

 ふーむ。

 ちょっと酸味のある、唐辛子の効いた味付けだ。

 だが、全体としてまろやかな調和がとれており、すっと喉を通ってゆく。

 こうなると、この怪しいピンク色のスープの正体が知りたくなるのが人情というものだ。

 店の親爺に声をかけると、さらに怪しい練り物のようなソースを見せてくれた。

ソース


 一般的には、瓶詰めされた液体状のソースを振りかける店がほとんどだ。

 ところが、この店ではある市場で仕入れた練り状の特性ソースを使っているのだという。

 ふーむ。
 
 だがしかし、このピンク色のソースの正体とは一体なんなんだ!?

      *

 ここで知ったかぶりをすると、その正体は「腐乳」なのである。

 さらに臆面もなく博識振りを披露すると、腐乳とは豆腐と麩(ふ)を一緒に塩水に浸けて、発酵させた中華食材の一種なのだ。

 中華料理では、旨味調味料としてコクを出すために煮物や炒め物に入れたり、お粥のトッピングとしてもよく使うらしい。

 発酵食品なので「豆腐のチーズ」と呼ばれることもあり、臭いもなかなかのものだそうだ。

 これだけだと、ひるむほどの臭いと塩味だというが、惣菜やお粥と一緒に食すと驚くほど味に深みが出る。

      *
 
 色は白の場合が多いのだが、紅麹(べにふ)を使って発酵させると紅い色の「紅腐乳」に変わる。
 イエンタフォー・ソースはこの紅腐乳を使うから、スープが紅色、というよりもスープと混じり合ってピンク色になるという仕掛けだ。

 その素性は、中国でタオフー・ジーと呼ばれる腐乳豆腐と紅麹を塩水中で発酵させたものと、トマトソースまたはチリソース&唐辛子を混ぜた混合調味料といえる。

「イエンタフォー」という呼び名は、どうやら中国の「釀豆腐」にルーツを発するらしい。

 「醸」とは、発酵を意味する。

 つまり、もともとは中国からタイに伝来した料理だと考えられるわけだ。

 しかし、タイ語で豆腐は「タオフー」というのだけれど、今では「(イエン)タフォー」に変わっている。

      *

 どうしてだ、え?

 どうしてなんだよお!

 貴様あ〜、そんなことも知らねえのか?

 ドン!(取り調べ室の机を叩く音です)

 その変化の過程については、にわか勉強の爺様を拷問にかけて、これ以上厳しく尋問するのは酷というものであろう。

 お代官さま、どうか勘弁してくだせえまし。

 ほらほら、つべこべ御託を並べていると、せっかくの具はふやける、麺はすっかり伸びちまうぜい。

th_全体俯瞰


 へいへい、そいじゃあ、先ずはエビ様から。

 あふあふ、ア、これは天ぷらだなあ。

 イカは、ぷりぷり、むっちりと噛み応えがあって。

 むふう、ルクチンプラー、甘みがあってルクチンムー(豚肉丸団子)なんぞ、へへ〜っと恐れ入りそうだ。

 半透明の平麺は清楚なたたずまいで、喉越しツルツル。

 空芯菜は、カリカリしてさっぱり。

 ふう、ぼかあ、幸せだなあ。

スープ


 麺と具をおおかた平らげると、丼の底にはピンク色のスープが堂々と胸をそらして傲然と出現する。

「どうだ、参ったか、この俺様がイエンタフォーの味の秘密を握っているのだぞお!」

 その埃、もとい誇り高さには、こちらも客という立場を忘れて、思わず平伏したくなるほどの存在感なのである。

 これが慣れ親しんだカオソーイならば、すぐさま飯を放り込み、カレーライスにして反撃を敢行したいところだ。

 だがしかし、敵は中国百年の麺の歴史にルーツを持つらしい強者である。

 それに、麺たくさん、具たくさんで、育ちのいい爺様はすでに腹一杯なのだ。

 ゲップ!

 ここは敵に余裕を見せながら、ゆるゆる、たらたらとスープの最後の一滴まで傲然と飲み干したい。

 うーむ、そこのイエン太とやら、ご苦労であったのお!

 さて、勘定は如何ほどじゃな?

 ゲゲッ!

 な、なんと、たったの30バーツ!?

 ヒ、ヒエ〜ッ!

     *

 ハッキリ言えば、今回写真で紹介したような正しく堂々としたニッポンの、もといタイランドの本格イエンタフォーには、滅多に出会えるものではない。

 そこいらのクイティアオ屋に、この重厚かつ繊細な味わいを求めるのは酷というべきだ。

 だから、あなたは食べるのを諦めなさい。

 そんな可哀想なあなたの代わりに、この爺様がたっぷり食べてあげますからねえ。

 それでもたっての願いだというのなら、店の場所を教えてあげましょう。

 いいですよ、いいですよ。

 じゃあ、あとで銀行の口座番号と謝礼の相場を教えますから、たっぷりとね。

 ふふん、ふん♪

 いえいえ、もちろん、気は心、気は心。

 オホオホオホ・・・。

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