またひとり、友の訃報を聞いた。
私よりも二歳年上で、まだ68歳だった。
最後に会ったのは、わが宿を2度目に訪ねてくれた2015年の6月である。
その後、しばらくご無沙汰していたので、村を離れた直後にFacebookでメッセージを送った。
だが、一ヶ月以上経っても返事が届かない。
妙な胸騒ぎがした。
心急かれるままに、彼と同じくタイの「ルクトゥーン(大衆歌謡曲)」を愛する共通の友人に問い合わせた。
返事は、すぐに戻ってきた。
彼はいわゆる追っかけだった。 年に数度もタイを訪れては各地で行われるコンサートを追いかける。
決して高級な会場ではなく、お寺やショッピングセンターの駐車場などで行われることが多いという。 座席などはなく、パイプ椅子を20バーツで借りるような騒音混じりのざっかけな雰囲気の中での演奏と声援だった。
彼は、そんな劣悪な環境の中でひたすらビデオを回し続けた。
なぜなら、それこそが彼の愛するルクトゥーンだからだ。
*
高校の校長まで務めた彼は、哲学やクラシック音楽にも造詣が深かった。
そんなあなたが、なぜ大衆歌謡のルクトゥーンを?
忙しい追っかけの合間に、何度もオムコイの我が宿を訪ねてくれた彼にそう訪ねたことがあった。
彼は私のリクエストで流してくれていたタカテンの曲に身を揺らしながら、心に染み入るような笑顔でこう答えた。
「理屈抜きに楽しい音楽だから」
昨日初めて知らされたことだが、彼はステージⅣのガンを患っていたという。
そして、今年の7月に交通事故で逝った。
反対車線に飛び出してガードレールにぶつかり、その反動で反対側の堤防に激突するという大事故だったという。
その瞬間、一体彼の身に何が起こったのか?
彼の仲間たちは、連絡の取れなくなった彼の安否を、あらゆる手を尽くして探ったのだという。
彼はリタイア後、家族と離れて先祖代々受け継いだ桑畑をひとりで管理していた。
そこで、仲間たちは彼が暮らしていた鹿児島の地方新聞にアクセスして、ようやく彼の事故と死を報じる記事を見つけた。
以降、親族とも連絡がとれないため、これ以上の詳しい情報は得られなかったそうだ。
*
それにしても、そのとき、彼の身に一体何が起こったのか?
今となっては、それを知る術はない。
ただ一つだけ言えるのは、彼はその瞬間が来るまで、クルマの中でルクトゥーンを聴いていたはずだということ。
そして彼岸へと旅立ったあとも、大好きだったルクトゥーンを体を揺らしながら陽気に楽しんでいるに違いないのだということだ。
むろん、その手には私と酌み交わし合った村のラオカオ(米焼酎)のグラス・・・。
友よ、陽気に眠れ。
そして、体揺らしつつ聴けよ、今も私の胸に流れ続けるあのタカテンの歌声を!
かつて共に過ごした際の写真公開の可否を、もはや彼に尋ねることはできない。
だが、彼はきっと目尻に深いしわを刻みながら、こう言ってくれるだろう。
「いいよ、だって理屈抜きに楽しかったんだから」と。
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