冒頭

 一昨日の夕暮れ時。

 晩飯のおかずを買いに出ると、総菜屋のあたりの雰囲気がどうもいつもとは違っている。

 おかしいなあ?

 そう思いつつ近寄ってゆくと、すぐ向こう側の食堂の鉄柵とそれを支えるコンクリートの柱や壁が、根こそぎなぎ倒され、ぶち壊れているではないか。

事故直後


 あちゃ〜ッ!

 一体、何が起きたんだあ?

     *

 実はこの小さな食堂、11月21日に書いた「神様、仏様、カオソーイ様」という記事で紹介した“究極のカオソーイ”を出す店なのである。

 決して、専門店というわけではない。

 だが、12月5日付けの「カオソーイで幸せになる方法」の中でも触れたように、チェンマイの某有名店をはるかに凌ぐ気品と気迫に満ちたカオソーイを作って、貪欲な爺様の胃袋を日々、歓喜の渦で満たしてくれているのであった。

事故1時間前


 そ、その“究極のカ、カオソーイ屋”が、い、いま、爺様の目の前で、む、無惨な姿をさらしている、あわわ・・・。

 これをショックと言わずして、何をショックと呼べばいいのだろうか。

 ガーン!

 これで、あの歓喜のカオソーイは二度と食べられないのだろうか?

     *

 そこへ、すっかり顔なじみになった女将さんがひょいと顔を出した。

 おお、無事だったのか!?

 この女将さんや親爺さんの安否をさておいて、先ずはカオソーイの安否を気にかけた自分を大いに恥じながら、爺様は訊いた。

「一体、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、クルマが店にいきなり突っ込んで来たんだよ!」

「親爺さんは無事かい?」

「ああ、大丈夫だったよ」

「酔っ払い運転?」

「いいや、女の運転手が事故に巻き込まれそうになって、ハンドルを切り損ねたらしいんだ」

検分痕2

検分痕1


 彼女の話をまとめると、こうだ。

 今日の午後2時頃、店寄りの左車線を走って来たクルマが、凄い勢いで突っ込んで来て、頑丈なはずの鉄柵をドガンドガン、ガギガキガキとなぎ倒した。

 クルマはそのまま止まったからいいようなものの、もしももっと勢いがついていたら、目と鼻の先にある調理台の向こうに立って作業していた二人も、決して無事では済まなかっただろう。

 女性の運転手がハンドルを切り損なった原因は、対向車線を走って来たクルマが、いきなり車線を超えて彼女の目の前に迫って来たからなのだ、という。

 おお、怖わ・・・。

     *

 午後2時といえば、爺様がこの店で昼食のカオソーイを食べていたちょうど1時間あとだ。

 そして、爺様が座っていたテーブルは、この調理台の斜め前くらいに置かれていた。

厨房の前


奥にテーブル


 もしも、その時間にクルマが突っ込んで来ていたとしたら、直接的な被害は受けなくとも、心臓マヒかなんかでとっくに昇天していたかもしれない。

 おお、怖わ・・・。

     *

「今日は、無事にカオソーイが食べられるのだろうか?」

 翌朝になって、早くも昼飯の心配をしながら現場を覗きに行くと。

処理工事


 すでに業者がやって来ており、破壊された鉄柵やコンクリートの撤収作業を行っていた。

 調理台には覆いがされて、とても調理などできそうには見えない。

 ああ、今日は休みかあ。

 がっくりだなあ。

 そんなら、お昼はどこで何を食べようか。

     *

 そんな能天気なことを考えていたら、奥から親爺が顔を出した。

「今日は休みなの?」

「ああ、これじゃあ、とても商売なんかできないよ」

 親爺はあたりを指差して、大きな溜め息をついた。

「工事が始まったんだね」

「ああ、この残骸を全部どけて、新しく作り直すのに4日はかかるんだそうだ」

「え? 4日も!」 

 目の前が暗くなる。

     *

 ああ、この先96時間、私は一体どうやって生きて行けばいいのだろう。

「ねえねえ、親爺さん。カオソーイは手間がかかるから無理にしても、せめてカオマンガイ(蒸し鶏のご飯載せ)くらいは、こっそりと俺だけのために作ってくれないかなあ」

 いかに本音とはいえ、この傷心の親爺の前ではとてもそんなことは言えない。

 言えば、瞬時に首を絞めて殺されるだろう。

「貰い事故の上に4日も休業させられたんじゃあ、それこそ堪んないよね。頭が痛いだろうけど、せいぜい骨休みと考えてさ。また、カオソーイ食えるのを楽しみにしてるから」

     *

 滅茶苦茶なタイ語で意味が通じたかどうかは知らないが、ともかく、「そんな励ましを言ったのだ」という心で、現場をあとにした。

 休業分の補償や再建工事費は、どうやら保険でまかなえるらしい。

 それだけが、せめてもの救いだろう。

 96時間の時空を経て、たくましく甦れ、わが究極のカオソーイよ!

*もしも、チェンマイで運転手付きワゴン車&乗用車が必要になったら。
【連絡先】 SV GLOW Co., Ltd.
*日本語専用電話 09-3291-0786 (広報支援ボランティア直通)     
*日本語専用e-mail : bestdrive-chiangmai@yahoo.co.jp
*URL : https://www.facebook.com/kunta2627/?modal=admin_todo_tour

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